こんな本、あんな本
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■著者:高橋邦典(写真・文) ■発行所:ポプラ社 ■発行日:2003年12月 ■1300円+税 | ●お正月3日、朝日新聞に「子どもに見せられないことを大人たちがやっている」というキャプションとともに、右の写真が本の広告として全面に掲載され、とてもインパクトがありました。 ●自衛隊のイラク派兵の時期、あえて「子どもたち向けの戦争の写真絵本」として出した出版社の勇気と判断に感心します。 ●米軍従軍記者という取材の仕方に著者は、最初から抵抗感、不公平性を気にしながら、「早く仕事(戦争)を終え家に帰りたい」とぼやく米兵(18歳から20歳代)と戦禍の中のイラクの人たちの姿を写しています。 ●著者の高橋邦典さんは、ベトナム戦争報道中に亡くなった写真家・沢田教一さんを目標に、戦争や貧困などの写真を撮っている人。 高橋邦典さんのHPも必見です。 |
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■著者:ラッセル・マーティン(木下哲夫=訳) ■発行所:白水社 ■発行日:2003年12月15日 ■2000円+税 | ●本書の序章にありますが、著者が久しぶりにマドリッドの美術館でゲルニカに再会した日が01年9月11日。 「ふだんは平穏な空からいきなり飛来して」まずニューヨークで、その後アフガニスタン、イラクで過去のゲルニカのように多くの命が失われています。 ●愛する故国スペインの都市ゲルニカを瓦礫にしたフランコをピカソは絶対に許さない、それどころか戦闘宣言として大作ゲルニカを制作。 しかし、その後ゲルニカには戦争難民として苦難の運命が・・・。 著者のゲルニカへ対する情熱、そして平和への思いが伝わり、とても良い本です。 ●「芸術家はそれだけでなく政治的な存在でもあり、世の中の悲しみ、情熱、あるいは歓びにもつねに関心を抱き、ただその印象にそって自らをかたちづくっている、他人に興味をもたずにすませるはずもない。日々これほど広く深く接する暮らしそのものから、冷めた無関心を装って、自らを切り離すことなどできるはずもない。いや、絵はアパートを飾るために描かれるのではない。絵は戦争の道具です。」 (パブロ・ピカソ) |
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■著者:赤松徳治 ■発行所:白樺と琥珀の館 ■発行日:2004年3月29日 ■1000円+税 | ●灘区の敬愛する詩人・赤松徳治さんの三つ目の詩集。亡くなった高島洋さん(詩人)、馬部貴司男さん(小説家)を除けば、私たちが灘で最も親しいお付き合いのある文学者です。 ●もともとロシア文学が専門で、お酒と議論が大好きで、毎日ぐらいデモをやるべし、でも権力はダ〜イ嫌い・・・人となりを数え上げたらとてもページが足りません。 ●この詩集にも虐げられた人や動植物の詩が多くあります。その一部だけ紹介すると、 あぜ草の間で 仔犬が/青空を嗅ぐように鼻先を天に向け/長々と寝そべっている/青田を渡るそよ風が/ういういしい黒い毛並みを/なでていく/伸ばした喉元の/白い斑が鮮やかだ/七月の晴れた日の午後の/のどかな風景であったろう/歯を噛みしめ 少しむき出した口元に/血がこびりついていなかったら/長々と寝そべるあぜ草の横を/疾走するダンプカーの/土煙がなかったら (そよ風) |
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■著者:アイザック・アシモフ 訳:小尾芙佐 ■発行所:早川書房 ■発行日:2004年8月15日 ■724円+税(ハヤカワ文庫) | ●映画『ミクロの決死圏』や『アンドリューNDR114』、最近の映画『アイ、ロボット』の原作者・アシモフの古典短編集を同映画の公開時期に再版したもの。 ●「ロボットは人間に危害を加えてはならない」など有名な(?)「ロボット工学の3原則」は、本書の冒頭に掲げられたもので、手塚治虫さん、SF界、実際のロボット工学など大きな影響を。ホンダのロボット・アシモの名前の由来。 ●ロボット開発の過程を回顧しつつ、人間とロボットとの関係から「人間ってなんだろう?」ということを求めています。 ●でも、論より証拠、一度読んでみて下さい。 私の個人的な好みは、第1章の「ロビイ」。ロボットと少女との交流がとても素晴らしいです。 |
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■著者:ボブ・ウッドワード 訳:伏見威蕃 ■発行所:日本経済新聞 ■発行日:2004年7月14日 ■2200円+税 | ●著者はウォーターゲード事件のスクープで有名なワシントン・ポストの記者(
現在編集局次長)で、前作『ブッシュの戦争』の続編。 ●この本を読むと、9・11があろうとなかろうとイラク戦争を準備し、しゃにむに短期解決を至上命題に作戦準備していたアメリカ政府の内情がよくわかります。 ●しかし、現実のイラク戦争の経過はご承知のように、戦闘終結を03年5月にブッシュ大統領が行ったにもかかわらず、大量破壊兵器もなく、フセイン政権を打倒しても未だに帰国できず米軍は砂漠の長期戦闘にあえいでいます。 |
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■著者:吉村昭 ■発行所:文藝春秋 ■発行日:2004年8月10日 ■543円+税(文春文庫・新装版) | ●新しい本ではなく、1977年に発刊された文春文庫の新装版です。 ●阪神・淡路大震災の時も外国人が避難家屋で泥棒に入っている、しかし、捕まえてみたら日本人だったという話がありました。 この本にもあるように、関東大震災の時に軍や警察が、デマを事実として通達し、朝鮮人や中国人、社会主義者の虐殺につながりました。 ●地震は天災ですが、人間社会で起きる震災は人災です。 |
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■著者:浦沢直樹 手塚治虫 ■発行所:小学館 ■発行日:2004年11月1日 ■524円+税 | ●鉄腕アトム・シリーズの「地上最大のロボット」という作品を原作として新しく生まれたのがPLUTO。ビッグコミック・オリジナルに連載中です。 ●浦沢直樹さんは好きな漫画家の一人で、ちょっと前のYAWARAは我が家の愛読書。 ●第1集の中で、とくに好きなのが第4章「ノース2号」。このコーナーで先に紹介した『われはロボット』のロビーを思い出します。 ●戦闘用ロボットとして造られたノース2号、今は盲目の作曲家の下で執事の仕事を。そのうちに「もう戦争へ行きたくない、ピアノが弾けるようになりたい」と願いながら、戦闘で音楽と共に空中分解していく場面は感動的。 これからのPLUTOがとても楽しみです。 |
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■著者:五十嵐太郎 ■発行所:晶文社 ■発行日:2003年9月5日 ■2300円+税 | ●今年の本ではありません。戦争と建築の関係について古代から"9・11"まで書いてあります。 ●興味深いのは、やはり9・11にからんでのエピソード。 同時多発テロのターゲットになった世界貿易センタービルを造ったのが建築家ミノル・ヤマサキ(日系二世)なら、そのビルに突っ込んだテロリストも建築や都市計画を学んでおり、二人とも非西洋の世界に憧れていたという。 ●街の中に防犯カメラがあふれて「セキュリティ都市」(著者の言葉)志向が強まる中、いろいろな示唆を与える本です。 |
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■著者:立花隆 ■発行所:文藝春秋 ■発行日:2004年9月25日(第2刷) ■2667円+税 | ●名前を知らなくても、あの黒の色が画面を圧倒的に支配する絵は見たことがあるはず。私もテレビで初めて見た時、ショックでした。 ●随分長い「まえがき」にもありますが、立花隆さんが若き日に香月泰男のゴーストライターとして書いた『私のシベリア』、だから立花さんの思い入れがもの凄い。 ●画集もあるけど、香月泰男の黒は彼の故郷・山口県の美術館(県立美術館および三隅町立香月美術館)で原画を見るべし、立花さんが本の中で何回も繰り返しています。 ●戦争とシベリア抑留の経験を戦後ずっと描き続けた一人の画家の話です。ご一読を! |
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■著者:橋田信介 ■発行所:新潮社 ■発行日:2004年11月1日 ■438円+税 | ●今年イラクで襲撃され死亡したフリー・ジャーナリストの取材日記『走る馬から花を見る』を改題して発行された文庫版。 ●報道・取材の世界では早くからフリー・ジャーナリストへの外注(アウトソーシング)が行われ、とくに戦争報道ではフリー・ジャーナリストの活動がその中心。しかも多くの犠牲者を出してきています。キャパ、沢田教一、そして橋田信介など。 ●文庫版にだけ収録されている「戦場カメラマン・橋田信介の素顔」(奥様の橋田幸子さんの手記)を含めて心温まる本です。 |