やっぱりおかしい介護保険


「第三者評価」問題について



              ■ 目   次 ■


    1.その流れと背景


    2.福祉オンブズマン制度と第三者評価制度

     @ 福祉オンブズマン

     A 第三者評価

     A−1 厚生労働省の考え方(社会・援護局福祉基盤課)

     A−2 厚生労働省の考え方(他の部局も含む)

     <追記2−A−2−1>

       介護サービスに第三者評価 05年度から段階的導入
                      (朝日新聞03年8月20日付)


     A−3 でも、評価した後はどうなるの?


    3.神戸市「第三者評価」の問題点(評価も丸投げ)

     @ 評価機関と行政の関係

     A 「公正な市場競争」といいながら、実は「排除の論理」

     <追記3−A−1>

       「希望事業者伸び悩む」(神戸新聞02年12月12日)

     <追記3−A−2>

       賞味期限切れ(神戸市消費者協会)& やる気をなくした(神戸市)

     <追記3−A−3>

       公表せず(神戸市消費者協会)&「評価に対する信頼の失墜」(神戸市)

     <追記3−A−4>

       ついにHP閉鎖(神戸市消費者協会)&「知らなかった」(神戸市) 

     B 国との関係


    4.他の自治体の第三者評価(北九州市、愛知県高浜市、姫路市)


    5.介護保険、そして福祉全体で行政の責任(主体性)

     @ なぜ、行政自体が「評価」をやらないのか?

     <追記5−@−1>

       兵庫県、来年2月にも第三者評価制度導入へ
                      (神戸新聞03年9月11日付)


     A なぜ、行政がサービス事業をやらないのか?



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1.その流れと背景

 ルーツは20年以上前の中曽根内閣の臨調・行革に始まるが、とくに最近の橋本内閣の行政改革から小泉内閣の構造改革までの動きは、日

本の社会福祉、社会保障について、事業の進め方そして基本的な考え方を一変した。


福祉事業の進め方:

職員の人件費削減→公社など外郭団体へ委託→民間へ一部を外注・下請化→完全に民間事業化


介護保険の場合:

措置制度の介護(限定的ながら有用性・使用価値としての介護)→サービス商品としての介護(介護の時間は重視されるが、お互い顔が見えなくなる介護)


アメリカの医療では:

「私は昔医者をしていた。今、人々は私のことを医療サービス提供者と呼ぶ」
    (李啓充『市場原理に揺れるアメリカの医療』)


 もちろん上記の変化は必ずしも段階的なものではなく、それぞれ自治体によっては途中とばしで進められた。

 自治体の側からこうした変化を強く主張している東京都は、最近作成した『2001年版 東京の社会福祉』(平成13年4月1日発行)の中で

「これまでの『限られた人』のための福祉のシステムは、いわば制度疲労による限界が見え始めており・・・利用者指向の『開かれた福

祉』のシステムを、早急に構築していくことが必要」と、提唱している。

 いずれにしても、こうした変化の代表例が介護保険であることは間違いない。





2.福祉オンブズマン制度と第三者評価制度


 私流の結論を、まず先に言うならば、

 これまで自治体を中心に導入されてきた福祉オンブズマンは、臨調・行革路線との関連はありながらも、住民の側からの行政チェック、異議の申し立てなど「住民主権」の精神からも大きな意義を持っている。


 しかし、この住民側のオンブズマン制度と今、厚生労働省の進めている「第三者評価」とは、大きなギャップがある。
 むしろ、政府は疑似オンブズマン的手法で「住民主権」という重要な精神を変質・歪曲させようとしている。



@ 福祉オンブズマン

<なぜ設置されたか>

 もともとスウェーデン語で「代理人」を意味する「オンブズマン」は、日本の場合では特にそのスタート時、当時の臨調・行革的な意味

合いから出発した。その後は活動の中で、もちろん地域差や団体差もかなり残存しながら、行政に対する住民の側からのチェック、異議申

し立て、苦情改善、情報公開など次第に「住民主権」的な意義を持つものへ成長していった。この延長線上に「住民投票」がある。


日本における自治体オンブズマン

1983 臨調答申
  
1990 川崎市市民オンブズマン
1990 中野区福祉サービス苦情調整委員会
1992 諫早市市政参与委員(後に廃止)
1993 新潟市行政評価委員会
1993 鴻巣市オンブズマン
1995 沖縄県行政オンブズマン
1995 西尾市行政評価委員会
1995 横浜市福祉調整委員会
1996 藤沢市オンブズマン
1996 世田谷区保健福祉サービス苦情
1996 宮城県県政オンブズマン
1997 川越市オンブズマン
1997 三鷹市福祉オンブズマン(2000一般型へ移行)
1998 新座市オンブズマン
1999 山梨県行政苦情審査委員
1999 秋田県県民行政相談員
1999 北海道苦情審査委員
1999 御殿場市オンブズパーソン
1999 上尾市市政相談委員
2000 多摩市福祉オンブズマン

 【資料出所:「自治体オンブズマン制度の課題」 佐藤和晃 2000 北大卒論】


※ 兵庫県下では、川西市子ども人権オンブズパーソン(1998)、 宝塚市福祉オンブズ委員会(2000)などがあり、とくに宝塚では市長から

委嘱を受けた10名のボランティアが定期的に特養、老健施設を訪問している。

※ またオンブズマンの中には、「介護保険市民オンブズマン機構大阪」(代表理事:岡本祐三・神戸市看護大学教授、顧問:堀田力・さ

わやか福祉財団理事長、同:高畑敬一・元.松下電器労組委員長)のように、「従来の行政オンブズマンに見られるような『告発型』では

なく・・・『橋渡し役』を担います」(O−ネット活動のご案内)と、行政当局が大歓迎(?)するタイプもある。


A 第三者評価

 国は、2002年度からグループホームと保育所について第三者評価を導入しようとしている。

 事業者の提供するサービスの質を当事者(事業者及び利用者)以外の公正・中立な第三者機関が専門的かつ客観的な立場から評価すること。
  (「福祉サービスにおける第三者評価事業関にする報告書」
                  2001年3月 厚生労働省)

 
 従って、私は論理的にも「第三者」の中には「行政」も含まれると思うが、国の考え方では含まれない。

 このことについて厚生労働省は、次のような機能分担として説明している。

■設置基準(施設、配置人員)=法令的なもの=行政監査
                  (行政の仕事)

■サービス内容       =専門的   =第三者評価
                  (民間の仕事)

  (厚生省「福祉サービスの質に関する検討委員会」議事録)


 しかし、このような機能分担の説明でも、なぜ行政がサービス内容を評価できないのか、しないのか、理解に苦しむ。

 結局のところ、推測するに、国は介護保険に代表されるように、福祉制度を措置制度から選択制度へと切り替えた。その市場開放を保証するため行政介入を排除しようとしている。しかし、現実には、介護保険実施で明らかになったように、利用者の混乱、トラブルが出てくる。市場競争の保証と矛盾(利用トラブル)の緩和のための苦肉の策が、第三者評価にほかならない。

 この推測が的はずれでないのは、厚生省(当時)老人保健福祉局に2000年11月に設置された「介護保健サービス選択のための評価の在

り方に関する検討会」で検討会メンバーの発言をみれば、納得いくはずだ。

 「評価の在り方を検討するにあたっては、行政がせっかくの『市場のパフォーマンス』を邪魔しないようにしなければならない。行政、市民、施設(事業者)の役割を整理する必要がある。
 自己選択には『自己責任』が必ず伴う。消費者責任というものを、間接的にも表現する必要があるだろう。行政の関与の限界もうまく表現したい。『第三者評価』は国がやるものではない。下手をすると業務妨害で訴えられる。」
           岡本祐三氏(神戸市看護大学教授)

 厚生労働省は、認定機関(非営利法人、全国で1つ)と第三者評価機関(当面、都道府県に1つ)を設置し、評価の有効期間は5年以内

と位置づけて、平成12年度から兵庫など全国14の社会福祉協議会に業務委託し、モデル事業を実施した。



A−2 厚生労働省の考え方(他の部局も含む)


<厚生労働省でのサービス評価制度の検討動向>
項目
社会・援護局福祉基盤課
社会・援護局障害保健福祉部
雇用均等・児童家庭局
老人保健福祉局
委員会名
福祉サービスの質に関する検討会
障害者・児施設のサービス評価基準検討委員会
児童福祉施設等評価基準検討委員会
介護保険サービス選択のための評価の在り方に関する検討会
評価方法
第三者評価
施設の自己評価
第三者評価
利用者のチェックリスト
対象
福祉サービス全般
身体障害、知的障害、精神障害者・児の施設
保育所、児童養護施設、母子生活施設、乳児院
当面、訪問介護と看護
実施主体
第三者評価機関を国が育成(社会福祉協議会などを想定)
社会・援護局で検討するシステムで使用する
未定
利用者自身(第三者評価は行政がやるべきではない)
実施予定
H12:全国社協を通じて県社協がモデル実施
H13:評価調査員養成研修の実施
H12:自己評価を全施設でモデル実施
第三者評価を社会・援護局のシステムでモデル実施
H12:全国15地区でモデル実施
H13:全都道府県でモデル実施
評価調査員養成研修の実施
H14:順次実施
未定

           【資料出所:東京都福祉局および兵庫県県民生活部】



<追記2−A−2−1>
    以下は、朝日新聞をそのまま打ち直したものです。


   介護サービスに第三者評価
     05年度から段階的導入 来年度7事業試行

                  (朝日新聞03年8月20日付)


 厚生労働省は19日、すべての介護保険サービス事業者に対し、外部機関の評価を受けることを義務づける「第三者評価制度」を導入する方針を固めた。05年度以降、段階的に全サービスについて義務づける。来年度、訪問介護や特別養護老人ホームなど7サービスを対象に、全都道府県でモデル事業を実施する。
 9月に専門委員会を立ち上げ、評価項目や方法などの課題を詰める。
 来年度のモデル事業の対象になるのは訪問介護(ホームヘルプ)、訪問入浴、通所介護(デイサービス)、福祉用具貸与、特定施設入所者生活介護(有料老人ホームなど)、特別養護老人ホーム、老人保健施設の7サービス。
 事業はまず同省所管の公益法人が主体となり評価員の養成・研修にあたる。研修の参加者が都道府県にある7サービスの施設や事業の一部に出向いてサービス内容や運営体制を評価、都道府県は評価結果の開示を試験的におこなう。
 将来は基準を満たした社会福祉法人や特定非営利活動法人(NPO法人)が都道府県の指定を受けた評価機関になる見通し。評価の結果はインターネットなどで公開する方向だ。
 第三者評価制度は現在、痴呆のお年寄りが暮らすグループホームで義務づけられている。評価結果の公開で利用者が事業者を選びやすくするほか、競争を促してサービスの室を向上させることが狙い。これを全事業に拡大していく。
 グループホームは全国に3千ヵ所足らず(4月現在)だが、訪問介護事業所は約1万8千、特別養護老人ホームは約5千もある。評価機関や評価員をどう養成するかが課題となる。




A−3 でも、評価した後はどうなるの?

 問題は、評価の実施主体の問題で終わらない。第三者評価を実施した後はどうなるのか?今のままだと、せいぜい結果を公表して、利用

者の「自己責任」による選択と、事業者の「良心的な」あるいは「自主的な」改善を期待するしかないのか?
  

 しかし、「自己責任」というには、利用者の情報や知識はあまりにも貧弱なものでしかない。万が一の「業務妨害の訴え」を恐れ、懐手をし傍観している行政が、例外的にその腰をあげる希有な場合は、泣き寝入りしない立派な消費者(利用者)が現れ、その申し出があってからだ。行政的な改善命令など、第三者評価を担保するものは厚生労働省の構想には何もない。





3.神戸市「第三者評価」の問題点(評価も丸投げ)

 私は、神戸に住んで36年になるが、この町が好きだ。震災を経験してから余計に愛着が湧く。かってこの都市は、「都市経営」と呼ばれ

る行政手法で「株式会社」と全国で言われた。当時、よその町へ行った時「神戸はいいでしょう、なんせ株式会社ってくらいだから」と言

われる度に、なんとも言えぬ違和感を抱いた。「市民は誰も株(市政の発言権・決定権)を持ってませんよ」と、説明してもなかなか納得

してもらえなかった。
 しかし、この神戸市が今度は悪名をもって全国に有名になったの

は、震災直後の笹山市長の空港建設発言と神戸市の介護保険のやり方だった。

 とくに、神戸の介護保険は、スタート前の老人意向調査も、スタート後は認定調査からサービス提供まで「何から何まで全部を民間まか

せ」と市民の厳しい評価とは逆に、目下のところ介護保険の「神戸方式」と厚生省の評価は高い。


《参考》●「ケアプランに利用者や家族の希望が十分に反映されて
     いる」いう回答の割合


今回の調査結果(01年1月)
前回の調査結果(00年5月)
27.5%
60.0%
     【資料出所:神戸市「介護保険サービス利用者アンケート」】


《参考》●「現在受けている介護サービスに満足しているという回答
     の割合

今回の調査結果(01年1月)
前回の調査結果(00年5月)
27.5%
60.0%
        【資料出所:同   上  】


《参考》●介護サービスの利用率(2000年度のほぼ決算数字)

支給限度額に対する給付実績の割合
38.7%
          【資料出所:神戸市介護保険課】


《参考》●2000年度介護保険予算の執行率(ほぼ決算数字)


予算に対する介護給付費(実績)の割合
85.5 %
          【資料出所:神戸市介護保険課】



@ 評価機関と行政との関係

 神戸市が、第三者評価を実施するにあたって「神戸ケアネット」(市の介護保険ホームページ)などを通じて発表した考え方は、「公

平かつ独立性のある、また消費者の観点に立った地域に密着した団体でサービスの評価を行うことが望ましい」(『神戸市介護保険サービ

ス研究会』においての意見 神戸ケアネットを通じて2000年9月1日に神戸市介護保険課が発表)である。具体的には、次の通り。


設置日
平成12年8月31日
機関名
神戸市消費者協会介護保険評価委員会
体制
妹尾美知子(消費者協会専務理事)以下17名
調査員
約60名(全てホームヘルパーの資格、調査員証を所持して調査)
調査員の研修
1日のみ
調査項目
22項目(◎ ○ △の3ランク 調査データは非公開)


※ 事業者は、神戸市消費者協会と任意に契約し評価料(利用者が20人以上8万円、20人未満5万円)を支払い評価を受ける。

※ 神戸市は、協会に評価情報の使用料99万円を支払って評価情報を買い取り市民に提供。

※ 評価実績:H12で23事業者、H13.1〜4で12事業者。なお、有効期間は1年。

※ 評価を行う調査員の中には、訪問先事業者のヘルパーより経験が浅くて、事業者から信頼性に欠けるという話も聞く。

※ 森田文明・市介護保険課長の話=「民・民契約である介護保険のサービス契約にどうすれば介入できるか、介護保険を消費者行政としてとらえ、編み出した方式」(月刊『さあ、言おう』 2000年11月号 さわやか福祉財団)

※ しかし、市の神戸ケアネットに表示される市民向けの情報は、ちょうど高校野球の時に学校別に表示される打撃力や守備力など戦力分析グラフと同じ蜘蛛の巣グラフ等。これを見て果たして何人の市民が各介護事業所のサービス内容を理解できるのだろうか?

※ 神戸市と神戸市消費者協会との関係は、実は市とは大変に因縁の深い神戸市婦人団体協議会との関係にほかならない。妹尾美智子氏は、市消費者協会の親団体である市婦人団体協議会の専務理事でもあるからだ。



A 「公正な市場競争」といいながら、「排除の論理」導入か? 

 2001年3月31日付けで市内に全戸配布された「市広報こうべ」は、介護保険事業者の波紋を呼んだ。市内182あるヘルパー事業所のうち

第三者評価を>受けたわずか31の事業所についてのみ掲載された広報だったからだ。

 森田・市介護保険課長に言わせれば市の評価を受けない、受けられなかった事業所は「勇気がない」そうな。

 しかし、本当の問題は「勇気云々」ではなくて、市民に満足のいく介護サービスを保障することについては、個々の事業所の責任ではなくて、市の介護保険計画を策定した神戸市に明確に責任がある。仮に現行の評価制度を是としても、神戸市はそれこそ公費を投入してでも介護保険の全部の事業所に評価を受けさせ、市民の安心を保障すべきではないか。


<追記3−A−1>
    以下は、神戸新聞をそのまま打ち直したものです。


   神戸市 介護サービス「第三者評価」 希望事業者伸び悩む
                  (神戸新聞02年12月12日付)


 介護サービスの第三者評価が徐々に広がっているが、全国初の取り組みとして注目されていた神戸市の第三者評価で、評価希望が伸び悩んでいる。高いと批判のあった料金8万円を本年度から3万5千円に下げたが、事業者には不評で、各市町村が介護サービス評価のあり方を検討する中、"先進地"は早くも軌道修正を迫られている。
 同市の第三者評価は市民への情報提供を目的に2000年秋に始まった。市消費者協会に評価委員会を設け、まずは訪問介護事業者の評価に着手。ヘルパー資格を持つ協会員が調査し、結果をインターネットや在宅支援センターなどで公表している。
 初年度は32事業者が評価を受けたが、01年度は12事業者に減少。委員会では料金を半額以下にしたが、このほど締め切った02年度分の応募も13事業者で、市内の222事業者の6%。
 評価を受けることに関し市内のある事業者は「メリットがない」とし、理由に、情報提供が目的なのに市民への広報が不十分▽調査員の力量に問題がある▽評価結果の説明が足りない−などと指摘。市シルバーサービス事業者連絡会の佐伯壽一会長は「理念には大賛成。介護の質向上につながるような評価方法に改善を」とする。
 神戸市は「広報不足など改善すべき点もあるが、事業者側に評価されることへの抵抗があるのでは」と分析。「一生懸命やっているのだが・・・」と市消費者協会の妹尾美智子専務理事は困惑しつつも「求められる評価事業にするために新しい切り口を考えたい」としている。



<追記3−A−2>

  賞味期限切れ(神戸市消費者協会) まるでやる気なし?(神戸市)


 いろいろ訳ありの神戸市の「第三者評価」だが、久しぶりにインターネットで見た。見てみて驚いた。
 以下は、その印象記です。(03年12月1日現在)

まるでやる気なし?(神戸市)
 まず、評価結果を公開していたはずのページがなかなか見つからない。公開し始めた当初は、神戸市HP→神戸ケアネット→神戸市消費者協会(神戸市婦人団体協議会)というリンクで見ることができた。
 ところが、今ではそのルートでは見ることができない。神戸市の介護保険HPである神戸ケアネットから「第三者評価」は外されている。
 仕方がないので市のHPで「第三者評価」を検索すると、やっと出てきた。なんと掲載されている場所は、神戸市生活情報センターのHPで、しかも専用コーナーではなくバックナンバー情報(2000年度「消費者被害速報」:いつまで載ってる情報か?;しかも市生活情報センター専用ページではなく、神戸市消費者協会つまり神戸市婦人団体協議会へのリンク頁)の中にあった。
 これでは市民は見ることができないし、まず見ない。

賞味期限切れ(神戸市消費者協会)
 次に、掲載されている情報を見てこれまたびっくり!公表された最初の古い情報もそのまま。ご丁寧に最初の時期のコメントが残っていて、「評価結果の有効期間は公表日から1年間です」と。掲載元が「製造年月日」など敏感なはずの神戸市消費者協会であり、何とも言えない皮肉、ブラックユーモアだ。
 ちなみに、掲載されている評価結果は、次の通り。

 ■02年6月公表分
  市内709事業所で評価が公表されているのは9区の27事業所。
   しかし、公表日が01年12月12日の情報もあり、今では(03
  年12月現在)情報の「賞味期限」である「有効期間」1年がとっく
  に過ぎている評価も。

 ■03年3月20日公表分
  市内734事業所のうち7区の18事業所のみ。
  灘区および長田区の事業所はゼロ。

 とうとう神戸市もこの問題で、やる気をなくした!



<追記3−A−3>

  公表せず(神戸市消費者協会) 「評価に対する信頼の失墜」(市)


   とうとう公表もやめた第三者評価? いよいよ末期的症状では!

 神戸市の神戸ケアネット(市の介護保険公式HP)をみると、「市民福祉調査委員会 介護保険専門分科会 企画・調査部会」の資料が掲載されている。その04年2月12日付けの資料をみると、「神戸市における介護サービスの第三者評価の現状と今後の方針について」という資料がある。同資料によると、

 ■00年度に評価を受けた事業者
    事業者数35(全部が訪問介護)

 ■01年度に評価を受けた事業者
   事業者数27(訪問介護9、通所介護18)

 ■02年度に評価を受けた事業者
    事業者数19(全部が訪問介護)

 ■03年度に評価を受けた事業者
    事業者数2(全部が訪問看護)

 これを00年度はとりあえず除外して、01年度から合計すると01+02+03=48となる。年度と年の取り方にもよって多少の違いが当然あるだろうが、上記<追記3−A−2>の神戸市消費者協会のHPの合計45と一致しない。
 とくに、03年度に評価を受けたはずの2事業者についてはHP上で公表されるべきであるが、04年8月30日の今日現在でも公表されないままである。
 神戸市は「今後の方針」という項で次のように書いている。「これら、国、県の第三者評価事業の動きがある中で、従前からの市独自の第三者評価事業を推進していくことは、行政によって複数の第三者評価制度を構築することになり、事業者自身の評価制度への対応や利用者への情報提供に混乱を招き、結果として、評価に対する信頼の失墜を招くおそれがあります」と。
 しかし、国や県のせいではなく神戸市「自身の評価制度への対応」(上記のいいかげんな評価制度の取り扱い)により、「信頼の失墜」をはや招いている。


<追記3−A−4>

  ついにHP閉鎖(神戸市消費者協会) 「知らなかった」(市)


   とうとう神戸市「第三者評価」もお終い! 

 いろいろ悪口を書いてきた神戸市「第三者評価」であるが、04年8月31日をもってそのHPが閉鎖された。
 この記事は10月12日に書いているが、たまたま今日の午後、ろっこう医療生協と神戸市介護保険課と話し合いの場があり、HP閉鎖のことを尋ねると「知らなかった」との返事。この問題で取り組むのも早かったが、離脱するのも神戸市は早かった。


B 国との関係

 神戸市の始めた第三者評価制度は、国の本格実施までの「つなぎ」と、データ取りの実験的意味合いが強いのではないか?




4.他の自治体の第三者評価(北九州市、愛知県高浜市、姫路市)

項目
北九州市
愛知県高浜市
姫路市
第三者評価の位置づけ
苦情調整委員会との2本立て
介護保険審議会に部会として
 
実施時期
平成12年12月から
条例施行平成12年4月
平成13年1月からモデル事業として
評価決定
評価決定委員会(5名)
第三者評価部会委員3名(大学教授1、市民公募2)
評価決定委員会(市民代表・事業者代表・公益代表から構成し約15名
調査員
介護福祉施設サービス調査部会(5名)、訪問介護調査部会(5名) メンバー:学者、弁護士、医師、ケアマネ、婦人会
非常勤特別職の権利擁護専門員
公募市民2と専門家1の3名で1チームの計3チーム
評価の仕方
「優れている」と「改善が必要な点」のみでランク付けなし
訪問介護で各60項目につき「ABCD」の4ランク評価
18種44項目についてA〜Eの5段階評価
評価の公表の有無
評価結果の概要を対象事業者の意見とともに公表
権利擁護専門員と市職員が別々に作成し、自己評価とすりあわせ部会と審議会への報告を経て公表
順次公表
その他
対象の事業者は申し込みで、多数の場合は抽選
市内事業者は定期的に(年1回)評価を受ける
事業者へ結果の公表資料を送り改善計画の提出を求め、再調査し結果を差し替える
当面は施設サービスについて、年度末までに在宅も体制確立。評価団体を年度末までにNPO法人化。
H13年度中は事業者負担なしで全額を市が負担。H14年度以降は1施設5万円の負担(NPO法人による独立採算をめざすため)
※ 姫路市は、ホームページ上で「介護保険年報」を公表している

 上記のどの評価方法を見ても、神戸市よりはるかにマシ(失礼!)で、それぞれ地域住民の期待や行政担当者の意気込みが伝わる。





5.介護保険、そして福祉全体での行政の責任(主体性)

 介護保険スタートから1年余、2001年5月に和歌山で起きたケアマネ殺人事件は、全国の介護保険関係者、国民に大きな衝撃を与えた。

 しかし、事件後に行政側からすぐ対策として出てきたのは、ケアマネなどへの「綱紀粛正」だった。公務員などの場合、不正をした直後

しばらく言われるが、不正の土壌はあまり改善されず、結局また同じことが繰り返されてきた。

 里見賢治氏(大阪府立大学教授)は、事件再発防止のため制度面での具体的な対策とともに、次の指摘をしている。



 「介護保険制度が営利企業に道を開きむしろ奨励したことが、モラル喪失の風潮と結びつき、資質の低い関係者にとって犯罪への誘発原因となる・・・今後の対策はモラル喪失社会を是正するため、市場中心主義に歯止めをかけ、共生・連帯社会への軌道修正をはかることが大前提である」

    (里見賢治 朝日新聞2001年5月10日付け「私の視点」)


@ なぜ、行政自体が評価をやらないのか?

 地方自治制度の中には「監査」の制度がある。だが、実際には、おざなり・なれ合いで、住民が期待するような制度の実態にはない。

 また、近年に新設された「外部監査」の制度にしても、特別の期待が抱けるわけでもない。外部監査を契約で受けた弁護士や公認会計

士、税理士など個人および所属する事務所と監査される行政との関係が険悪なはずもなかろう。

 NPOやオンブズマンの役割・位置づけを軽視しているつもりは全くない。お互いの果たすべき役割は違うはずだし、また違わなければおかしい。
 行政も評価をやり、NPOもやり結果が違っても良いと思う。この中でおのずからお互いに緊張関係が生まれ、住民にはメリットがある。
 むしろ私は、活動資金補助・委託に隠れてNPOの行政下請化が進行している今の事態を心配している。
 しかし、それでも私は、介護保険の運営主体=自治体が評価をやるべきだと確信している。
 それぞれ自治体が介護保険事業計画を策定し、また住民から介護保険料を行政が徴収する以上、公費を投入してでも住民に対し行政はその責任を果たすべきだ。
 今の状態をみるならば自治体は、あたかもサラ金の取り立て屋に似た役割に堕している。


<追記5−@−1>
    以下は、神戸新聞をそのまま打ち直したものです。

  兵庫県、来年2月にも第三者評価制度導入へ 実施機関は公募

                 (神戸新聞03年9月11日付)


 県は10日までに、介護保険サービスの第三者評価制度について、来年2月の導入を目指す方針を決めた。同日開かれた県の推進委員会では、評価機関のあり方や評価方法などについて検討。委員会の議論をふまえ、県は今年11月にも評価機関を公募する。
 第三者評価は、介護サービスの向上や、サービス選択のための幅広い情報を提供するのが狙い。県内では神戸市や姫路市が実施している。
 県は、介護保険制度が導入された2000年度から、サービス提供事業者自らがサービスを評価する「自己評価」制度を導入。翌年からインターネットで結果を公開している。同時に第三者評価制度の検討を始め、02年度には県内24事業所でモデル事業を行った。
 県の案では、一定の条件を付けて、評価機関を一般公募。認証された機関は、評価を希望するサービス事業者と契約し、事業者の自己評価や利用者のアンケートを参考にしながら聞き取り調査する。
 評価基準は、「情報提供」「サービスの質の向上」「利用者の意向尊重」「快適な環境づくり」など自己評価制度の基準に沿うが、具体的には評価機関それぞれが主体性を持って調査を進める。
 この日の委員会では、「見た目のサービス態勢だけでなく、サービスそのものが評価されるシステムを」「利用者アンケートを重視すべき」などの意見が出た。
 10〜11月の次回委員会で、結果の公表の仕方などを議論。評価機関の公募を経て、来年1〜2月の委員会による評価機関の認証を目指す。




A なぜ、行政がサービス事業をやらないのか?

 神戸市では、介護保険が始まるまでは、市職員ヘルパーがわずか65名ながら活動していた。登録ボランティア=市民福祉振興協会の活動

が一般市民を対象としたのに、公務員ヘルパーは生活保護を対象としていたため、その存在に普通の市民は余り気がつかなかった。

 ところが、介護保険がスタートする前に、全員がヘルパーの仕事から市の他の仕事に配置換えになった。始まる介護保険で、ヘルパーを

含めて全部の介護サービスの仕事を民間に開放するためである。こうした出来事は実は神戸に限らず、介護保険の報酬単価をにらんで、公

務員であれ外郭あるいは社協の職員であれ、介護保険スタート前後に似たような話は、全国の大都市部で起きたらしい。

 しかし、僻地を含め郡部や中小都市では事情が違っていた。介護保険で実際に民間からの事業参入があったのは、全国約3300の自治体の

うち都市部を中心に3割程度で、残りの自治体には採算上から民間は参入しなかったり、また最初は参入してもその後経営上の理由などか

ら事業撤退した。その中で、当該の自治体は民間依存ではなく自前の職員を確保したりしてサービス提供を行っている。

 ところが、この出来事は、しばらくすると郡部だけの問題ではなくなった。今度は都市部でも似たような事が起きてきている。

 たとえば訪問介護の仕事のうち、実際に住民の需要が多いのは「家事援助」であり、単価が相対的に高い「身体介護」は事業者が想定し

たよりも需要が少なかった。このため介護保険を一攫千金の事業チャンスと期待していた事業者の中には、郡部からも都市部からも縮小・

撤退する所も出てきている。派手にテレビコマーシャルを流していた某ヘルパー会社が、大幅なリストラ・地域からの事業撤退をせざるを

得なくなったのもこの故である。

 つまり、介護単価の引き合う介護サービスには民間事業者は集まっても、そうでないサービスは敬遠され事業として展開しようとしな

い。まして慈善事業ではなく、利益が目的の営利会社であれば当然の話だ。勿論、介護事業者はこうした営利会社ばかりではなく、社会福

祉法人や医療生協なども含めてNPO系は頑張っているが、「家事援助」だけをみるとシンドイ経営であることは変わりない。

 こうして参入事業者の多いはずの都市部でも今やサービス種類によっては、せっかく認定された要介護者がサービスを受けられないか、

施設入所のように順番待ち・待機の状態を強いられているのが現実だ。


 その際、最後の責任は当然ながら自治体にある。民間がやらないサービスでも、なんらかの形で、最終的には自治体が独自に職員を採用してでもサービス供給を確保しなければならない。住民に対して、自治体にはその責任がある。


 最後に、民間事業にまかせることが、自治体にとっても、住民にとっても「本当に安くて、効率的なのか」(神戸市は、市民に対しまるで呪文のように「最小の費用で、最大の福祉」と言う)介護保険は実証的に検証されなくてはならない。
 例えば、見せかけ上の人件費や事務・事業費は減るかもしれないが、よく見てみると委託費や補助金の形で増えていないか?
 一方、住民の場合は、従前の税金負担に加えて介護保険料(利用した場合は1割の利用料)の負担が増えていて、安くは絶対になっていないはずだ。この検証は後日を期したい。


                       (2001年盛夏 吉田俊弘)