常時15〜16匹いた大佛次郎邸
▼「子猫で鈴をつけて、よく庭に遊びにくるのがあった。時間がくると、いつのまにか帰ったと見えて姿を隠し、また明日、やって来る。かわいらしい。
どこから遊びに来るのかと思って、ある日
『君ハドコノネコデスカ』
と、荷札に書いて付けてやった。三日ほどたって、遊びにきているのを見ると、まだ札をさげているからかわいそうにと思って、取ってやると、思いきや、ちゃんと返事が書いてあった。
『カドノ湯屋ノ玉デス、ドウゾ、ヨロシク』 君子の交わり、いや、この世に生きる人間の作法、かくありたい」
(大佛次郎『猫のいる日々』 六興出版 1978)
大佛次郎が亡くなって来年でもう20年(1992年当時)。この人は有名な猫好きだった。大佛家には、「住み込み」とか「通い」とか、常時15から16匹の猫がたむろしていたという。野良猫だろうが、差別なく可愛がる正統派の愛猫家だった。
猫と住宅問題
▼ところで、わが家にも、以前のマンション時代からの白猫が1匹いる。
動物を飼えない契約のマンション暮らし、猫は私たち家族の秘密の囲われ者だった。狭いマンションの3階、1年中外に出してもらえない猫は、よく病気をした。近所の動物病院に世話になったが、保険のきかないペットの病気は、人間にも頭痛の種だった。
今の住居、中古木造の家へ引っ越してからは、夜遊びやら近所とケンカやら、猫としては中年、老年の年齢なのに、一挙に青春真っ盛り。元はといえば、住宅事情という人間様の都合でこうなった以上、大目に見てやらねばならない。
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