▼そこは、阪神電車の窓から山側に見る場所だった。阪神青木から深江の駅のちょうど中間、周りはマンションが取り囲む東灘区本庄墓地。その真ん中で、欠けて古びた石のまま、その墓は立っていた。先月行われた戦跡ウォーク(神戸空襲を記録する会)の時のこと。 ▼昭和20年の空襲で落とされた焼夷弾のため欠落し、さらに12年前の阪神大震災で転倒、そのたび毎に墓石は起こされ据え直されたという。 ▼いわば満身創痍の状態で、墓石は「けなげに」立っていた。あえて新しい墓に造り替えたりせず、故人を悼んで建てた当初の墓石のままで。何かしら、思いが伝わってくる。人間を、いのちを大切にせよと。
写真: 憲法を生かす会・灘ニュース 07年5月号 文章: 同上 07年6月号