惜別・藤野先生の写真


 「彼の写真だけは、今なお北京のわが寓居の東の壁に、机に面してかけてある。夜ごと、仕事に倦んでなまけたくなるとき、仰いで灯火のなかに、彼の黒い、痩せた、今にも抑揚のひどい口調で語り出しそうな顔を眺めやると、たちまち私は良心を発し、かつ勇気を加えられる」 

 (魯迅『藤野先生』より)




魯迅(本名は周樹人):
 1881年、中国・浙江省紹興に生まれる。1904年に仙台医学専門学校(現・東北大学医学部)に入学。その時の恩師が藤野厳九郎先生。
 しかし、中途で日本留学を打ち切り帰国。掲載した写真のタイトル「惜別」は、別れに際して藤野先生から魯迅へ送られた写真の裏に書かれていたもの。
 その後は、近代中国を代表する文学者に。1936年10月19日没。

藤野厳九郎:
 1874(明治7)年、福井県あわら市に生まれる。仙台医学専門学校の教授時代に周樹人(後の魯迅)と出会う。医専退職後は郷里に戻り診療活動に従事。1945年8月11日没。


※ なお、上記写真は『藤野先生と魯迅−惜別100年−』(東北大学出版会)より