春




おかんはたった一人
峠田のてっぺんで鍬にもたれ
大きな空に
小ちやなからだを
ぴよつくり浮かして
空いっぱいになく雲雀の声を
ぢつと聞いてゐるやろで

里の方で牛がないたら
ぢつと余韻に耳をかたむけてゐるやろで

大きい 美しい
春がまはつてくるたんびに
おかんの年がよるのが
目に見へるやうで かなしい
おかんがみたい







   坂本 遼(さかもと りょう)



 1904(明治37)9月1日〜1970(昭和45)年5月27日 兵庫県加東郡東条町生まれ。

 旧制中学の時に全国中等学校柔道大会に出場。関西学院大学文学部入学。在学中の一時期に現在の神戸市灘区上野通にも居住。金融恐慌の年(1927)卒業したが、就職先はなく姫路野砲連隊に志願兵として入隊。
 その後民間会社を経て朝日新聞大阪本社に入社。応召で砲兵中尉として敗戦を迎え朝日新聞に復帰し大阪本社論説委員などを経て定年。その後は関西学院大学などの講師も。

 詩集『たんぽぽ』、小説集『百姓の話』、童話集『虹、真っ白いハト』など。

※この略歴は、『坂本遼作品集』(1981 駒込書房)と『おかんのいる風景ーたんぽぽの詩人坂本遼断章』(著者:高橋夏男 1986 神文書院)を参考にさせていただきました。





<追記>
 つい最近のことですが、坂本遼の孫にあたる坂本玲さん(東京在住)からメールをもらい、東条町に坂本遼文学館が出来たことを教えてもらいました。ぜひ一度訪れてみたいものです。

(03年3月27日)


<追記2>
 坂本玲さんから、昨日5月16日に地元・東条町で坂本遼・生誕100年祭が盛大に行われたこと、灰谷健次郎さんなどがお話をされたことなど、また教えてもらいました。行きたかったな!

(04年5月17日)


<追記3>
 またまた坂本玲さんのメール。上記の様子が地元のサンテレビで7月5日に放映されたことを知りました。
 「坂本遼の地元・兵庫に住んでいながら、ちっともお役に立っていない」ことをお詫びしておきました。

(04年7月13日)



<追記4>
 07年9月に神戸新聞(東播版)が特集。今は、神戸新聞の読者クラブで見ることができます。そのリンク先は、
  「たんぽぽと、おかんと 詩人・坂本 遼 〜はりま・名作の舞台


<追記5>
 坂本遼の三男にあたる坂本章(しょう)さんから、下記のようなメールをもらいました。それには、2013年3月10日に神戸新聞が特集した「郷土の詩人 坂本遼」という子ども向けの特集記事PDF(その記事には坂本章さん自身も登場)も添付されていました。

(13年3月21日)


◆坂本章さんからのメール
・・・・・・<前半省略>
春は確実に来ている感じがします。
吉田様も春への想いをお持ちではないでしょうか。
私は「もう何回花見が出来るかなあー?」と思いますから年齢と共に思考パターンが変化して来ました。
この様な限られた人生の中でも如何に人生を謳歌するか!大きな命題ですが、私の場合は仕事が趣味なのでしょうか、4月以降も○○に勤務します。
仕事には、必ず軋轢が出て来ますが、民間では有りませんので、悠長に構えています。
その一環として、時々、添付しました様な子供の詩への動機付けを微力ながら実践しております。
今後とも宜しくお願い申し上げます。

坂本章